Web3のトークン入門
仕組み・種類・使い方と、知っておきたいリスク
Web3でいうトークンは、ブロックチェーン上で発行・管理されるデジタルな「しるし」です。
支払い、会員証、投票権、作品の識別など、何を表すかは設計次第です。便利さの一方で、価格や権利、運営主体はトークンごとに異なります。まずは「何を表し、誰が何を約束しているか」を確かめることが大切です。
(基準日:2026年10月17日)
1 トークンとは何か
トークン(token)は、もともと「代用貨幣」「証票」「しるし」を意味する言葉です。ブロックチェーンの文脈では、ネットワーク上の台帳に記録され、スマートコントラクト(あらかじめ決めた処理を実行するプログラム)によって発行・移転・利用のルールが管理されるデジタル資産を指すことが多くあります。たとえば、あるサービス内で使えるポイント、会員資格を示す証明、投票に使う権利、デジタル作品を区別する番号などをトークンとして表現できます。
大事なのは、トークンそのものが一律の権利を保証するわけではない点です。保有者が受け取れるサービスや権利は、発行元の規約、契約、法律、技術上の設計によって違います。ブロックチェーンに記録があることは、発行元が約束を履行することや、その資産に市場価値が付くことを保証しません。利用前には「誰が発行したか」「何に使えるか」「停止・変更・償還の条件は何か」を確認しましょう。スマートコントラクトはブロックチェーン上で動くプログラムで、実行後の操作が取り消しにくい場合もあります。[1]
2 主な種類と使われ方
トークンは用途に応じて、いくつもの分け方ができます。代表例の一つが、同じ種類なら基本的に交換可能な「代替可能トークン」です。たとえば、100単位のうちの1単位は別の1単位と同じ扱いになります。Ethereumでは、こうしたトークンを扱う標準としてERC-20が広く使われ、アプリ内通貨、ポイント、投票用トークンなどに応用されています。[2]
一方、一つひとつが区別され、別のものと完全には交換できない「非代替性トークン(NFT)」があります。ERC-721はNFTを識別・移転するための標準の一例です。デジタルアート、ゲーム内アイテム、会員証、イベントの入場証などに利用できます。ただし、NFTを持つことが、作品の著作権や商用利用権まで持つことを自動的に意味するわけではありません。画像などのデータが別の場所に保存されている場合もあり、トークンの記録と実際に利用できる権利・データを分けて確認する必要があります。[3]
ほかに、サービス利用の手数料割引や機能解放に使うユーティリティ型、プロジェクトの提案に投票するガバナンス型、円やドルなどの価値に連動させることを目指すステーブルコイン、株式・債券・不動産などに関係する権利をデジタル化するセキュリティトークンなどがあります。分類名は便利な目安ですが、実際の権利や規制上の扱いは個別の設計と実態で判断されます。
3 コインとの違い
「コイン」と「トークン」は日常会話や事業者の説明で厳密に区別されないことがありますが、技術的には、独自のブロックチェーンの基盤として発行される暗号資産をコイン、既存のブロックチェーン上のスマートコントラクトで発行される資産をトークンと呼び分けることがあります。たとえば、EthereumのETHはネットワークの手数料支払いなどに使われる基盤資産であり、同じネットワーク上にERC-20やNFTのトークンを作れます。
この違いは、道路とその上を走る乗り物にたとえると理解しやすいでしょう。ブロックチェーンが道路、基盤コインが道路利用料、トークンがその道路上で運ばれるポイントやチケットにあたります。ただし、これは技術上の大まかな説明です。法律上は「コイン」「トークン」という呼び名だけで区分されず、移転性、発行者の約束、償還可能性、利益分配の有無など実態を踏まえて分類されます。日本でも暗号資産、電子決済手段、電子記録移転権利などはそれぞれ異なる制度の対象になり得るため、サービス提供者や商品の説明を確認してください。[4]
4 リスクと利用時の注意
第一に、価格変動と流動性のリスクがあります。売りたいときに買い手が見つからない、取引所での取り扱いが終わる、価値が大きく下がることがあります。ステーブルコインも、価格連動の仕組みや裏付け資産、償還方法、発行体の信用などに依存し、常に額面で換金できるとは限りません。
第二に、技術・保管のリスクがあります。秘密鍵や復元用の語句を失えば資産にアクセスできなくなることがあり、他人に知られると不正送金につながります。送金先やブロックチェーンのネットワークを間違えた場合、取り戻せないこともあります。また、スマートコントラクトに欠陥があれば、資産の盗難や利用不能につながり得ます。[5][6]
第三に、詐欺や説明不足への注意が必要です。「必ず値上がりする」「元本保証」「今すぐ送金すれば利益が出る」と急がせる勧誘、著名人や公的機関を装う連絡、見知らぬ相手からの投資話には慎重になりましょう。日本で暗号資産の交換や管理などを業として行う事業者は登録が必要です。金融庁の案内から登録状況を確認し、手数料、価格変動、サイバー攻撃、出金条件、補償の有無を読んでください。[4][7]
始める場合は、まずトークンの発行主体・目的・利用規約・権利内容を一次資料で確かめ、少額で操作を試し、秘密情報を共有しないことが基本です。ウォレット接続時には許可する内容を読み、理解できない署名や承認は行わないでください。
まとめ
トークンは、ブロックチェーン上で価値や権利、会員資格、デジタル物品などを表現する仕組みです。交換可能なものも、一点ごとに異なるものもあり、コインとの違いは主に「独自ネットワークの基盤資産か、既存ネットワーク上で発行された資産か」にあります。しかし、名前だけでは権利や安全性は分かりません。何を表すのか、誰が運営するのか、どんな条件とリスクがあるのかを確かめてから利用しましょう。
出典と参考資料
[1] Ethereum.org「スマートコントラクト入門」 https://ethereum.org/developers/docs/smart-contracts/
[2] Ethereum.org「ERC-20トークン規格の解説」 https://ethereum.org/developers/tutorials/understand-the-erc-20-token-smart-contract/
[3] Ethereum.org「ERC-721 非代替性トークン規格」 https://ethereum.org/developers/docs/standards/tokens/erc-721/
[4] 金融庁「暗号資産・電子決済手段関係」 https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency02/index.html
[5] 金融庁・消費者庁・警察庁「暗号資産を利用する際の注意点」 https://www.fsa.go.jp/news/r2/virtual_currency/20210407_pdf1.pdf
[6] Ethereum.org「スマートコントラクトのセキュリティ」 https://ethereum.org/developers/docs/smart-contracts/security/
[7] 米国連邦取引委員会 Consumer Advice「暗号資産詐欺について知っておくこと」 https://consumer.ftc.gov/articles/what-know-about-cryptocurrency-scams
注:本文は一般向けの教育目的で作成した情報提供資料であり、個別の金融商品・トークンの購入や売却を勧めるものではありません。投資助言、法律・税務上の助言でもありません。制度やサービスの内容は変更されることがあるため、利用時点の公的情報・契約・規約をご確認ください。


